野菜作りの上作テクニック
[第34回]コマツナ 2021年10月号
- 今月の3カ条
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- その❶一斉に発芽させて生育を揃える。
- その❷防虫ネットのトンネル掛けなどで虫害を防ぐ。
- その❸生育に適した株間を保ち、病気や徒長を防ぐ。
1. コマツナの基礎知識
コマツナは、カブから分化したアブラナ科の結球しない葉菜類(ツケナ)の一種です。発芽と生育適温はともに15~25℃ですが、暑さ寒さに強く、5~35℃の幅広い温度で発芽・生育し、氷点下でも枯死しません。
好適土壌㏗は5.5~6.5、少し強い酸性でもよく生育し、さまざまな条件下で栽培できます。また、連作にも耐え、トンネルなどの簡易な資材を利用すれば周年栽培も可能です。
タネが吸水し、芽が動きだした時から13℃以下の低温に一定期間置かれると花芽分化し、温暖・長日下でトウ立ちします(写真1)。このため、冬まき栽培ではトンネル被覆などで生育初期に保温し、花芽分化を抑制することが必要です。高温期にはアオムシなどの虫害や病害対策が重要になるので、涼しくなる9月中旬〜10月にタネをまくと栽培しやすいでしょう。
(写真1)トウ立ちしたコマツナ。蕾や花茎はナバナとして食べられる。
2. 品種の選び方
春まきや秋まきの場合、降雨で白さび病(写真2)が出やすいので白さび病に強い品種を選びます。夏まきは耐暑性に優れ、生理障害が出にくい品種、10月まきでは耐寒性と低温伸長性に優れる品種を選びます。
春~秋まきのおすすめはʻ菜々美ʼやʻ菜々音ʼ、10月まきではʻ楽天ʼがおすすめです。
そのほか、コマツナ特有の青臭さを抑えたʻちぢみ小松菜ʼを栽培してもよいでしょう。
(写真2)雨が多いと発生しやすいコマツナの白さび病。
3. 栽培のプロセス
1. 畑の準備
タネまきの1~2週間前に1m2当たり完熟堆肥500g、苦土石灰50g、チッソ、リン酸、カリを成分量で各15g、全面に施用して耕します。その後、幅70~80cm、高さ5~15cmのベッドをつくります。
2. タネまき
条まき(図1)
板切れなどで条間15~20cm、深さ1~1.5cmの溝をつくります(写真3)。溝の中にタネを約1cm間隔でまき、溝の両側の土を寄せて覆土し、板切れなどで軽く押さえてから水をやります(写真4)。
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(図1)コマツナのタネまき
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(写真3)板切れなどを使って条間15~20cmで、まき溝をつくる。
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(写真4)1cm間隔を目安にタネをまく。
バラまき
秋まきでは、タネをバラまきすることもできます。ベッドの上にクワの背を押し当てて、幅約15cm(クワの刃幅程度)、深さ約1cmの溝をつくり(写真5)、1~2cm間隔でバラまきします。覆土の量を均一にするため、通路の土を取り、ふるいを通して覆土します(写真6)。最後にクワの背で軽く鎮圧します。
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(写真5)クワの背を押し当て、まき溝をつくる。
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(写真6)ふるった土で覆土する。
3. 防虫・防寒
アオムシやカブラハバチなどの虫害を防止するため、タネまき後すぐに防虫ネットをベタがけやトンネル掛けして、害虫の侵入を防ぎます(写真7、8)。
11月~翌年3月まきは生育促進とトウ立ちを防ぐため、保温シートのトンネル被覆を行って栽培します。穴あきフィルムを使用すると換気の手間が省けます。
収穫の5日ほど前にこれらの被覆資材を除去して日光を十分に当てると、葉色が濃くなり、茎葉ががっしりします。
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(写真7)防虫ネットをトンネル掛けして虫害を防止する。
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(写真8)被覆資材をベタがけするのも効果的。
4. 間引き
子葉が開いたころ、条まきでは1~2cm間隔に、バラまきでは3~4cm間隔に間引きます(写真9)。本葉2~3枚のころ、最終間引きをして所定の株間にします(上作のワザ!2参照)。子葉がいびつなものや生育のよくないもの、病虫害を受けたものを間引きます。光不足による徒長を防ぐため、葉と葉が触れ合うタイミングで間引きを行いましょう。
(写真9)子葉が展開したら、込んでいる所を中心に間引く。
5. 追肥
最終間引き後に葉色が淡ければ、化成肥料をチッソの成分量で1m2当たり3~4g施用します。
条まきの場合は、条間に施して移植ゴテなどで軽く中耕し、バラまきの場合は株の上から施用します。葉についた肥料は払い落とします。
6. 収穫
草丈が20~25cmになったら株を抜き取って収穫します(写真10、11)。サラダにするなら草丈20cmほどで葉がやわらかいものがよいでしょう。30cm以上になるとかたくなりますが、スープや炒め物などでおいしく食べられます。
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(写真10)収穫適期のコマツナ。
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(写真11)根ごと抜き取るか、地際をハサミで切って収穫する。
上作のワザ!
1. 土の表面を均一にして発芽のタイミングを揃える
一斉に発芽させるためには、❶タネをまく前に土を細かく砕く、❷タネをまく深さ、覆土を均一にする、❸発芽するまで土壌を適湿に保つことが大切です。そのためには、タネをまく直前に再度耕すことがポイントです。ゴロ土を取り除いてベッドをつくり、板切れなどで土の表面を平らにします(写真12)。覆土をしたらたっぷり水をやり、発芽するまで土壌を乾燥させないようにします。
タネまき後のベタがけは、土壌水分を保持し、雨で土がたたかれて土壌表面がかたくなるのを防ぎ、発芽を良好にする効果もあります。
(写真12)土を細かく砕き、ベッドの表面を平らにする。
2. タネまき時期に応じて株間を調整する
気温によって生育スピードなどが異なるので、時期ごとに株間を変えてタネをまきます。高温期には茎葉が徒長したり、病気が発生したりしやすいので、株間を広めにして風通しをよくします。茎葉の伸びが緩慢になる低温期には、株間を狭くして伸びを促進します。
最終間引き時(本葉2~3枚のころ)の株間は、条まきの場合、夏まき(6~8月)で5~6cm、秋まき(9~10月)で3~4cmにします。秋にバラまきをする場合は、5~6cmにします(写真13)。
(写真13)最終間引きの様子。
3. 時期をずらしてまく「段まき」で長く収穫
コマツナはほぼ周年栽培でき、数回なら連作もできるので、一度にたくさんまかず必要な分だけ時期をずらしてタネをまく「段まき」をすると長く収穫を楽しめます。
夏まきで20~25日、春や秋まきで30~50日など、まく時期によって収穫までの所要日数が異なるので、(図2)を参考にしてタネまき時期を決めるとよいでしょう。寒い季節につくる冬のコマツナは収穫までに日数を要しますが、甘みが増します。
(図2)タネまき時期と所要日数の目安
コマツナの おすすめ品種
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ちぢみ小松菜
葉が縮んでおいしさ凝縮!
甘みたっぷりのコマツナ
葉の縮みとつやのある濃い葉色が特徴。歯触りがよいのでお浸しや炒め物にすると美味。 -
楽天®
ボリュームある株姿で食べ応えもたっぷり!
生育旺盛で株張りに優れ、大株が収穫できる。低温期の伸長性に優れるので、秋冬まきがおすすめ。 -
菜々音
春~夏まきに向く中生種
高温期でも栽培しやすい
収穫期幅が広く、在圃性が高いので夏を中心に春~秋どりに向く。萎黄病、白さび病にも強く安心して栽培できる。 -
菜々美
白さび病に強い中早生種
初心者にも育てやすい!
高温期でも育てやすく、株張りがよい。萎黄病や白さび病に強い耐病性をもつ。収穫適期が長いのもうれしい。
川城 英夫(かわしろ ひでお)
千葉県農林総合研究センター育種研究所長などを経て現在、JA全農主席技術主管。農学博士。主な著書に「いまさら聞けない野菜づくりQ&A」、「野菜づくり畑の教科書」(家の光協会)、高等学校教科書「野菜」、「新野菜つくりの実際」(農文協)など多数。