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野菜作りの上作テクニック
[第36回]畑のリフレッシュ法(緑肥、太陽熱消毒)[最終回] 2021年12月号

野菜作りの上作テクニック

今月の3カ条
  • その❶連作障害への備えとして緑肥を活用する。
  • その❷センチュウの密度を減らす対抗植物で被害を予防。
  • その❸太陽熱消毒で土壌病虫害を減らし、雑草を抑制する。

長年、野菜の栽培を続けていると、土壌病虫害や生育障害に悩まされることが少なくありません。同じ種類、科の野菜を同じ場所で栽培(連作)すると、野菜の生育が思わしくなくなる連作障害が起きることがあります。そこで、最終回は、環境に優しい畑のリフレッシュ法をご紹介します。
家庭菜園でおすすめなのは、「緑肥の活用」と、マルチフィルムを用いた「太陽熱消毒」です。


1. 緑肥の基礎知識

緑肥は、レンゲなどに代表されるように、栽培している植物を収穫せず、土中にすき込み、有機質肥料のように利用される植物のことです。主に、ムギ類などのイネ科の植物、レンゲやクローバーなどのマメ科の植物、ヒマワリやマリーゴールドなどがあります。近年、緑肥のもつ多様な土壌改良効果が明らかになり、さまざまな植物が緑肥として利用されるようになっています。
緑肥は、土にすき込まれることによって微生物により分解されて腐植となります。腐植は、土壌の団粒形成を促進して土をふかふかにし、通気性や保水性をよくします。中でも、イネ科など深根性の緑肥は、根が深くまで伸びて水はけをよくするなど、土壌の物理性を改善します(写真1、2)。
腐植が増えることで保肥力が高まります。マメ科植物は、根に根粒菌が共生しており、根粒菌は空気中にあるチッソを固定する働きがあるため、土壌のチッソ成分が増加します(写真3)。また、根からの分泌物やすき込み残渣から生成される有機酸がアルミニウムと結合し、土壌に固定されていたリン酸を吸収可能にするといった、化学的な効果もあります。
さらに、表土流失や飛砂防止、雑草抑制や景観美化など、その効果を挙げればきりがありません(写真4)。

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    (写真1)有機物補給量が多いソルゴー。

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    (写真2)生育途中のライムギ。発芽が早く、寒さに強い。

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    (写真3)根粒菌がチッソを固定して、土壌を肥沃にするヘアリーベッチ。

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    (写真4)景観美化にも貢献するヒマワリ。

2. 緑肥の選び方

緑肥植物のタネまき時期やすき込み時期を確認し、輪作に組み込めるものの中から期待する効果が高いものを選びます(表1)。
異なる科の植物を作付けすることで、根域に集まる微生物の種類が多様化し、病原菌の繁殖を抑制します。センチュウ対抗植物(マリーゴールドなど)を作付けすれば、土壌中の有害センチュウの密度を減らす効果があります(写真5、6)。

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    (写真5)ネグサレセンチュウの防除効果があるエンバク野生種(アウェナストリゴサ)。

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    (写真6)センチュウ防除効果が高いマリーゴールド。

3. 栽培のプロセス

1. 畑の準備

施肥はチッソ成分で1㎡当たり5gを基準とします。前作で野菜を作っていて、肥料が残っているようなら無施肥でもかまいません。

2. タネまき

緑肥のタネまき方法には、主にばらまきと条まきがあります。バラまきは、所定の量のタネを均一にばらまき、レーキなどでタネが見えなくなるくらいに土と混ぜます。条まきは、三角ホーなどで深さ3~4cmの溝をつけてタネをまき、覆土します。条間を20cm以内にすることで、雑草やセンチュウ抑制に高い効果が期待できます。バラまき、条まきともに覆土後にローラーやトラクターのタイヤで鎮圧します。ローラー等が使えない場合は、板や足などで均一に鎮圧します。覆土、鎮圧は、発芽を促し、鳥害などを防ぐ大切な作業です。土が乾いていたらたっぷり水やりします。

3. 刈り取り、すき込み、腐熟

ある程度の大きさや栽培期間になったら、ロータリーやスコップなどを使ってすき込みます。イネ科作物は出穂始め、マメ科作物は開花始めまでにすき込みます。すき込みが遅れると開花して茎葉がかたくなり、分解までに時間を要するのでタイミングを逃さないようにします。
すき込みは、事前にカマや刈り払い機を使って地上部を刈り取ります(写真7)。丈が高い緑肥は、上から20cm間隔で根元まで刻み、スコップや耕うん機などですき込みます。天気がよければ刈り取った後に2~3日干すと、すき込みが楽になります。
後作の作付時期は、有機物の量や時期によって変わります。夏季ではすき込みから20~30日、秋冬は、約2カ月ほどおきます。根菜類は、タネまき時に未熟有機物があると又根が発生しやすいので、1カ月ほどおき、土壌の状態を確認してから作付けを行います。

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(写真7)地上部をカマなどで刈り取ってからすき込むと楽。

表1 主な緑肥植物の効果と使い方

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※◎=効果が高い。○=効果がある。▲=ネコブセンチュウに有効、◆=ネコブ・ネグサレセンチュウに有効。防除できるセンチュウは品種によって異なる。

やってみよう! 太陽熱消毒で土をリフレッシュ!

太陽熱消毒は、夏季に土壌水分が十分ある状態で、地温上昇効果の高い透明フィルムを20~30日間被覆して太陽熱を閉じ込め、地温を30℃以上に高めて、土壌中の病原菌や害虫、雑草のタネを死滅させる技術です。
太陽熱消毒を行うのに適した時期は、一年で最も高温、強日射が期待できる梅雨明け後から約1カ月間です。それ以外でも5~9月の期間内であれば、ある程度の効果を期待できます。

太陽熱消毒のプロセス

太陽熱消毒は、畑全面に行うこともできますが、ここでは畝ごとに行う方法を紹介します。家庭菜園や市民農園などでも実践しやすく、事前に土づくりを済ませておくことで、処理後、すぐに栽培をスタートできます。

1. 土壌水分の確保

太陽熱消毒は、タネまきや植え付けの1カ月以上前に始めます。マルチングをする前に、土壌水分が十分にあることが重要で、雨が降った後に行うのが理想です。雨が期待できなければ、事前にたっぷりと散水しておきます。

2. 土づくり

処理後に栽培する野菜の元肥として、有機資材(米ぬかまたは鶏ふん)、微生物資材を、1m2当たり各100~200g施用し、耕うんします(写真8、9)。

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(写真8)畝立て前に、米ぬかをまく。

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(写真9)土中に混ぜ込む。

3. 畝立て、マルチ張り

栽培する野菜に適したサイズの畝(ベッド)をつくります。畝立て後、フィルムと地表がぴったりと密着するよう土の表面を平らに整え、厚さ0.05~0.075㎜の透明フィルムを張ります。フィルムのすそは、土をかぶせて埋め込み、熱が逃げないようにします。この状態で、20~30日間放置します(写真10、11)。地温40~50℃以上で数日を経ると、害虫と雑草種子の多くは死滅し、カビや細菌の密度も低下します。

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(写真10)透明フィルムを張る。

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(写真11)マルチングから4日後の様子。地下20cmが44℃に上昇。

4. 消毒後の作付け

消毒後、マルチを使用する場合はそのまま作付けします。マルチを使わない場合は、除去後、耕うんせずにそのままタネまきや植え付けを行います(写真12)。地表に近いほど消毒効果が高く、殺菌されていない土を表層に出すと病原菌や雑草のタネを持ち上げることになるので、耕うんする場合は浅めにします。

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(写真12)ニンジンのタネまき。マルチをはがし、耕さずにそのままタネをまく。

微生物資材で効果アップ!

フィルムの被覆前に、米ぬかや鶏ふんなどの有機資材に、「バイオダルマ」や「FXキング」といった微生物資材を加えると、土壌中で微生物が爆発的に増殖して、作物残渣などの分解が早まります。根に付いていた病原菌も餌がなくなって減ります。また、大量に殖えた微生物の呼吸熱で地温が高まるほか、微生物間の拮抗作用などで防除効果がより安定します。

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古い土の若返りや連作障害の緩和が期待できる「バイオダルマ」。

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有用菌群FXの効果で作物の成長を促す「FXキング」。

緑肥の おすすめ品種

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    ひまわり・ジュニアスマイル

    美しい花が早く咲くコンパクトなヒマワリ
    140~180cmと草丈が低めの景観用ヒマワリ。初期生育が旺盛で、草姿がコンパクト。すき込み作業も楽にできる。

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    ヘアリーベッチ・ナモイ

    雑草を抑える効果大!根粒菌が土壌を肥沃に
    緑肥の中でも高い雑草抑制効果が期待できるマメ科植物。日陰でもよく育ち、ほふくした場合の草丈は40~50cm。

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    緑肥用ソルゴー

    豊富な有機物量が生産でき障壁作物としても活躍
    茎が細くて繊維がやわらかく、生育途中の株を耕うん機ですき込める。草丈2.0~2.8m。障壁作物としても好適。

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    らい麦・ライ太郎

    初期生育が早い超極早生種
    短期間の緑肥の代表選手

    有害センチュウであるキタネコブセンチュウの抑制効果が高い。低温期もよく発芽し、中間地では11月播種も可能。

緑肥のタネはタキイネット通販でご購入いただけます


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川城 英夫(かわしろ ひでお)

千葉県農林総合研究センター育種研究所長などを経て現在、JA全農主席技術主管。農学博士。主な著書に「いまさら聞けない野菜づくりQ&A」、「野菜づくり畑の教科書」(家の光協会)、高等学校教科書「野菜」、「新野菜つくりの実際」(農文協)など多数。

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